ハツ

ハツを、と、伝えると、行商人の変形した腕が、
傍らに置かれている壷に満たされた濁った液体の中から、
ひとりのニンゲンを取り出した。
行商人は、
ニンゲンと一緒に小さなお祈りをし、
ニンゲンの細い腕に錆びた注射針を突き刺した。
これから僕は、そのニンゲンの、心臓を食べることになるらしい。
ニンゲンには、事情がある。
僕には、大した事情がない。
ニンゲンには、生活がある、あったはずだ。
僕には、大した生活がない。
うまいぞ、と、行商人が言い、
うまいぞ、と、ニンゲンが言って目を閉じた。
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by betorium | 2008-02-01 14:28 |
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